10年に一度は必要と言われる外壁塗装。
建物の機能を維持したり、より集客力を上げるためには小まめなメンテナンスやリニューアルを行いたいものですね。
ですが、外壁塗装にも決して安くはない費用がかかってきます。
個人事業主の方は外壁塗装にかかった費用を経費で処理して、少しでも節税できたら嬉しいですよね!
外壁塗装の費用は、修繕費または減価償却費という経費として処理することができます。
この記事では、減価償却とは何か、どんな外壁塗装で必要になるのか、何年間するのかについて丁寧に解説していきます。
自営業や不動産経営をしていて経理にお悩みの方は必見です。
外壁塗装の減価償却について理解して節税しましょう。
減価償却ってなに?


あっくん、これ何て読むの?



「げんかしょうきゃく」と読むよ。これから意味を説明していくね。
まず前提として、減価償却が問題となるのは自営業の方や不動産経営をしている方が会計処理をするときです。
個人の住宅を外壁塗装した場合には、問題にはなりません。
個人事業主の方が外壁塗装をした場合、外壁塗装にかかった費用を経費として処理することができます。
減価償却というのは、その会計処理の一つです。
減価償却とは、使用や経年劣化で価値が減った分を費用として処理する仕組みです。
長く使うものは、使っている期間をかけて費用として処理しようということですね。





取得した金額を一年ずつに分割して、少しずつ経費にしていくよ。
外壁塗装を一度すれば、一年後にまた塗装を行うことはほとんどなく、次のメンテナンスが必要になるときまでは使用し続けますよね?
外壁塗装は一度行えば長期にわたってその効果が持続します。
その使用し続けている間に渡って、毎年費用を分割して経費としていこうということです。
長く使うものは、使っている間、取得金額を一年間ずつに分割して経費として処理する仕組みのこと
外壁塗装を減価償却するの?しないの?


外壁塗装をしたら、すべての場合で減価償却しなければならないというわけではありません。
減価償却しなければならない場合とそうでない場合があるので、説明していきますね。
まずは、減価償却をしなければならない場合です。
外壁塗装を減価償却するのはこんなとき!
外壁塗装を減価償却で処理しなければならないのは、建物の価値を高めるとき。
つまり、グレードアップする外壁塗装をした場合です。これを資本的支出と言います。
例えば、このような場合です。
- デザインをがらっと変える外壁塗装工事
- 雨漏りを直すだけでなく、防水性の良い塗料に変える
- アクリル塗料から、より耐久性の良いシリコン塗料に変える
つまり、デザインを変えたり、外壁の機能性や耐久性をアップさせるような外壁塗装を行うことが資本的支出にあたります。
この場合、減価償却をしなければなりません。
外壁塗装を減価償却しなくて良いケース
外壁塗装を行ったときでも、減価償却費として処理しなくてよい場合もあります。
このときは、経費として一括で処理することになります。
①修繕費となる外壁塗装
修繕とは、建物の価値を維持する、元に戻す(原状回復)ことを言います。
目安は20万円未満、修理の周期が3年以内であることです。
例えば、このようなときです。
- 雨漏りを直す。
- 前回使用していたのと同じ塗料を塗り直す。



これはあくまでも目安で結果は個々のケースによって違ってくるから、詳細は専門家に相談をすることをおすすめするよ。
②30万円未満の外壁塗装
特例を利用すると、金額が30万円未満の場合は一年間で最大300万円まで一括で経費として処理することができます。
ただし、この特例を利用できるのは青色申告をしている中小企業の方だけです。
この特例を利用できる方は、減価償却にするか、一括で処理するかを選択することができます。



青色申告ってなんのこと?



個人事業主の確定申告には、白色申告と青色申告があるよ。青色申告は、事前に申請が必要で、つける帳簿も少し複雑なんだ。その代わりに、色々な特別措置を受けることができて節税効果が高いんだよ!
外壁塗装を減価償却する年数は?<基礎編>





外壁塗装を減価償却するのは何年間なの?自由に決めていいのかしら?



税務上は決まりがあるんだよ。じゃあ、次は外壁塗装を減価償却する年数について説明していくね。
外壁塗装費用は、耐用年数の間、減価償却費として処理します。
耐用年数とは、使用することができる期間のことですが、この耐用年数には色々な意味があるので注意が必要です。
代表的な意味について説明しますね。
期待耐用年数
期待耐用年数というのは、塗料の効果が持続する期間としてメーカーが定めたものです。つまり、塗り替えの目安ですね。
期待耐用年数は塗料の種類によって異なります。代表的なものをあげてみます。
- アクリル系塗料 5~7年
- ウレタン系塗料 7~10年
- シリコン系塗料 10~15年
- フッ素系塗料 15~20年
- 無機塗料 20年~30年
これはあくまでも目安なので、実際の使用期間は建物の立地などの影響を受けます。
直射日光の当たる場所や湿度が多くカビの生えやすい場所では、劣化するのも早くなるでしょう。
法定耐用年数
法定耐用年数が、減価償却の計算に使用する耐用年数です。
課税の公平性のために法律で決められており、実際に使用した年数とは関係ありません。
資産ごとの法定耐用年数は、国税庁のホームページで調べることができます。
しかし、塗料の法定耐用年数は定められていません。
外壁塗装の減価償却費を計算するときには、外壁塗装を行う建物の法定耐用年数を使います。
建物の法定耐用年数は以下の通りです。


ご覧いただくとわかるように、木造、鉄筋コンクリートなど建物の構造によって法定耐用年数には違いがあります。
さらに、住居用、飲食店用などの建物の使用の目的によっても異なります。



こんなに細かく法律で決められているのね。



建物の構造や用途によって劣化する速さが違うから、細かく決めてあるんだよ。
会計上の耐用年数
確定申告をする際など、税務上は減価償却計算には法定耐用年数を使うことになっています。
しかし、会計上は「企業の経済的実態に合わせること」が重要視されます。
法定耐用年数は前もって法律で決められたものですが、実際はもっと早く買い替えたり、長く使ったりしますよね。
この場合に、会計上は実際の使用年数に合わせることが理想です。そうすると、会計上の耐用年数は企業によって異なってきます。
会計帳簿が税法上と異なってしまうと、処理が複雑になり、中小企業にとっては望ましくありません。
そのため、会計実務でも法定耐用年数を使用することが一般的です。
外壁塗装を行う建物の法定耐用年数を使用する。
外壁塗装の減価償却費を計算しよう!





外壁塗装を減価償却する年数について理解できたところで、いざ減価償却費の計算をしてみよう!
減価償却費の計算方法にはいくつか種類がありますが、建物では定額法を使用します。
定額法は毎年均等に減価償却していく方法です。一年間の減価償却費は次の計算式で求めることができます。
外壁塗装費用×償却率=一年間の減価償却費
償却率は、減価償却資産の償却率表で調べることができます。


例えば、木造のお店で100万円で外壁塗装を行ったとき、一年間の減価償却費を計算してみます。
木造建物の店舗用の法定耐用年数は22年です。
上の償却率表で法定耐用年数22年のところを見ていただくと、償却率は0.046となっていますね。
これを計算式に当てはめてみると、100万円×0.046=4.6万円と計算することができます。
外壁塗装を減価償却する年数は?<応用編>


ここまでは、基本的な外壁塗装の減価償却の計算方法を説明してきました。
ここからは、もう少し複雑なケースで耐用年数が何年になるのかを考えていきますね。
一つの建物を複数の目的で使用している場合
原則、耐用年数は一つの建物に対して一つです。
しかし、建物の使用の目的によって法定耐用年数が異なってきます。
すると、一つの建物を複数の目的で使用している場合、耐用年数を何年にするのかが問題になりますね。



一階がお店で、二階以上が住宅である建物なんかよく見かけるわね?



そうだね。そういう建物で外壁塗装をした場合をイメージしてみてね。
この場合、主な用途の法定耐用年数を使用するのが一般的です。
建物を一番多く利用している目的の法定耐用年数ということですね。
一階が店舗だとしても、二階以上がすべて住居なら住居用の法定耐用年数を使用します。
ただし、例外として、建物の一部を特殊な用途に使用するため特別な内部構造にしている場合はあてはまりません。
例えば、劇場と店舗が同じ建物に同居している場合ですね。
この場合は一つの建物でも用途ごとに別々の法定耐用年数を使用します。
劇場は劇場、店舗は店舗の法定耐用年数ということですね。


中古物件を外壁塗装した場合



最近は中古物件を購入した後に、外壁塗装をする人も多いわよね?築年数がかなり経っていることもあると思うけど、そういう場合も減価償却できるのかしら?



できるよ!ただ、法定耐用年数をそのまま使うわけじゃないから、ちょっと複雑なんだ。ここまで理解できたら、減価償却の耐用年数は完璧だよ。



もうひと頑張りね!
中古物件を購入してその後に外壁塗装をした場合、減価償却費を計算するときは簡便法という計算方法で耐用年数を計算します。
【簡便法】
(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%
端数は切り捨て、計算結果が2年未満のときは2年が耐用年数となります。
ただし、法定耐用年数を既に過ぎている場合は、これが耐用年数となります。
法定耐用年数×20%
簡便法で計算できるのは、外壁塗装の費用が中古物件の金額の半分を越えない場合です。
あまりに多額の費用をかけて大幅に外壁塗装を行った場合は、新築したのと同じとみなされて、基本通り法定耐用年数を使用します。
外壁塗装を減価償却するメリットとデメリット


最後に外壁塗装を減価償却することには、メリットとデメリットがありますので知っておきましょう。
外壁塗装を減価償却するメリット
①毎年経費化できることで、長期に渡って節税効果がある
税金は、一年間の収入から経費を差し引いた利益の金額によって決まります。
一括で経費として処理してしまうと、翌年度は経費とすることができないので利益が増えてしまい節税効果を得ることができなくなってしまいます。
②一年間あたりの経費をおさえることができるので、黒字化経営しやすくなる
毎年の利益に変動がある場合は、一年間にかかる経費の金額を小さくすることで黒字にしやすくなります。



銀行から融資を受けたい場合には利益が出ていることが必要になるから、融資を受けたい方には、大きなメリットだね。
外壁塗装を減価償却するデメリット
①処理が複雑になる
減価償却するとなると難しい用語を理解していることや複雑な計算が必要になってきます。
一括で処理できればそういった必要がないので簡単ですね。
②工事費用は現金として出ていくのに、その全額を経費として処理できない
費用が分割できるということは、裏を返せば一括で処理できないということになります。
もし一括で処理することができれば翌年の税金を大幅に節税することができますが、分割するとそうはいきません。
一時的に現金が減ることになります。



メリットとデメリットは表裏一体ね。
外壁塗装費用を一括で処理するのか、分割で処理するのかは法律で決まっていて、自由に選択することはできません。
一年で大きな節税をしたいのか、長期に渡って少しずつ節税をしたいのか、経営状態に合わせて外壁塗装の目的を決めることが必要ですね。
どちらにするか計画してから外壁塗装を行いましょう。
外壁塗装の減価償却と耐用年数のまとめ
最後に、外壁塗装の減価償却と耐用年数についてまとめますね。
減価償却とは、外壁塗装費用を一年ごとに分割して経費として処理する仕組みのことです。
外壁塗装の減価償却を計算するときには、塗装を行う建物の法定耐用年数を使います。
- 複数の用途で使用している建物→一番多い用途の法定耐用年数を使います。
- 中古物件を購入して外壁塗装をした場合→耐用年数は簡便法で計算します。
法定耐用年数を経過していない:(法定耐用年数-築年数)+築年数×20%
法定耐用年数を経過している:法定耐用年数×20%



複雑で難しかったわ~



税金に関係してくることは難しいよね。
建物の価値を高めるために外壁塗装を行ったときには、減価償却して経費とすることができます。
そのときの年数は、あらかじめ法律で決まっています。今回は少し複雑なケースについても説明しました。
ぜひ、この記事を参考にして節税につなげてみてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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