現代は住宅の高気密・高断熱さを重視する傾向が強いですよね。
快適に暮らせて省エネ。お財布にも優しい生活。デザインやスタイルも様々。
それは素晴らしいことだと思います。
しかし、あえて昔ながらの自然の産物・土壁を選び、残す人も多くいます。
そこで今直面する問題がまさしく断熱です
「冬はすごく寒い。隙間風も吹き、起きたら白い息が出る」
「夏もすごく涼しいわけじゃない」
「土の雰囲気は大好きだけど、暮らしにくそう」
・・・そういえば何年か前の冬に、僕は母と岡山県の倉敷に旅行したことがあります。
雪も積もって寒かった日でした。やわらかな明かりと土壁の風情に惹かれて、カフェに入りました。
暖房は暖炉だけでしたが、体も心も芯からじんわりとほぐれていきます。
素焼きのカップで温かいコーヒーを飲んで母と2人まったりと時間を過ごしました。
説明のつかない心地よさがそこにはあったのです。
現在は昔とは気候が変わり、環境問題が多く取りざたされています。
土壁は現代と伝統のはざまでその存在を危ぶまれている感じすらします。
今回は、このようなことを調べてみました。
「土壁の良さを活かしながら、快適な住み心地を実現・現代に合わせた断熱リフォーム」
土壁の長所や安らぎを得ながら、住み心地のいい日本のイエが実現できますよ。
■目次
伝統的な土壁の特徴

伝統的な土壁は柱と柱の間に木を通し、竹を編みこんだ下地にわらなどを混ぜた土を塗ってできます。

①調湿性・・・土は呼吸をする素材なので、室内と室外の湿気を調整する。
②蓄熱性・・・土は暖まりにくい。しかし熱や冷気を蓄える容量が大きいので、
冬は冷えにくいし夏は暑くなりにくい。
③遮音性・・・土は中身がぎっしり詰まっている素材のため、音が気になりにくい。
④におい・・・土は呼吸するとともに空気を清浄化する。

土壁を断熱するイミは?

暑い、という原因は単に室内温度ではありません。
体感温度は室内温度+輻射(ふくしゃ)+湿度です。特に夏の不快指数は温度より湿度に拠るものです。
同じ温度でも、北海道の暑さは湿気が少なくて過ごしやすいと言いますよね。


そう、それが輻射効果だね。冬は暖炉や囲炉裏で温まった土壁がそのままぬくもりを逃がさないから、土壁に触れている部分がじんわりとあったかく感じるんだよ。
夏は同じようにエアコンの冷気を逃さないから土壁の部屋はなんとなくひんやりするんだ。
土壁にも基準に合った断熱を
問題はその「室内温度」です。室内温度は当然外気温度に比例します。
土壁に断熱性はほぼないので、いくら湿度を抑えても、暑いものは暑いのです。
冬も同じ、寒いものは寒いのです。
ではどうすれば良いでしょう?
土壁も断熱すればよいのです。
現代の家が断熱リフォームするように、土壁にも断熱リフォームをしましょう。
土壁も空気でくるんでぬくもりと涼しさを

外気を断つのが断熱材
断熱材とは空気を含むことで熱を伝わりにくくするもので、大きく2種類あります。
- 「繊維系断熱材」細かな繊維の中に空気を閉じ込める・・・グラスウール・ロックウールなど
- 「発砲経緯断熱材」細かな気泡の中に空気を閉じ込める・・ポリスチレンフォームなど

引用:マグ・イゾベール

数値は少ないほうが断熱の性能が高いってことだよ。
ただし、断熱材の熱をカットする力は、熱伝導率と断熱材の厚さの関係で決まります。


①グラスウール

引用:楽天市場
リサイクルガラスなどを高温で溶かして繊維状にしています。
メリット・・・高性能・低コスト。日本で一番使われている断熱材。施工しやすく、シロアリの被害に合いにくい。不燃材料
デメリット・・・湿気に弱い。施工時に隙間が生じやすいので、施工業者の腕により結露が生じることがある。
②ロックウール

引用:楽天市場
繊維状にした人造鉱物繊維のことです。
耐熱性や吸音性はグラスウールよりも高く、ボード状のものもあります。
メリット・・・リサイクルが可能。経年劣化が少ない。シロアリ被害に合いにくい
デメリット・・コストが少し高い。硬いので折り曲げると繊維が壊れることがある。吸湿すると断熱性が落ちる。
発砲系断熱材も使われることがあります。
また、セルロースファイバーも性能に優れ施工も便利ですが、内側からの施工になるため土壁の性質を活かす断熱リフォームには適しません。

この家に壁内結露などおこさせない!
正確に施工すれば、伝統的な土壁、現代の気候と省エネにマッチする断熱材、両方のメリットを活かした、住みやすくて素晴らしい住宅になります。
ただし、それは施工業者の腕次第です。信頼できる・技術力の高い業者であるかによります。
①土壁と断熱材を入れることのメリットを十分認識していること。
②熱抵抗の計算、結露計算の意味を理解して、正確にできること。
③断熱材などを正しく施工することのできる技術力があること。
結露は今まで調べていく中で、何度もその被害の怖さを思い知らされました。
土壁の結露の場合も、正しい施工をしないと断熱材の中の結露から始まって壁内結露が起こってしまいます。
部屋の中からは分からない結露なので対処のしようがなく、カビが生えてしまった壁は耐震性も弱くなります。
【断熱材の施工不良による壁内結露の影響】

引用:OK-DEPOT


「土壁に断熱材を入れることは不可能だ」と言われてしまうこともあるんだよ。
断熱リフォームでさらに土壁を魅力的に!!

ここはとりあえず外からの断熱で
まず土壁の特性のうち調湿性・蓄熱性・匂いの吸着性能を活かそうとすると、断熱材は家の中からではなく、土壁の外からが大前提となります。
外からの断熱には2つの方法があります。

引用:住宅用語辞典
柱と柱の間に断熱材を挟み込む工法です。現在の断熱工法で最もよく使われます。
基本的に室内から壁を壊して断熱材をいれますので内断熱と言われることがありますが厳密に言うと別のものです。
手間もかからず大工さんの手で施工できるため、費用も比較的安く済みます。

引用:住宅用語辞典
柱などの構造材の外に断熱材を張り付けていく工法です。
比較的簡単に隙間なく詰めることができるので断熱・機密性能が確保しやすいです。
外壁を壊すので、作業スペースが60cmほど必要です。


「夏はさらっと、冬はじんわり」土壁断熱リフォーム
土壁の場合、柱との隙間はせいぜい30mmですので、柱の間に断熱材を入れる充填方法のみでは断熱効果がありません。
外張り断熱方法をとりいれた付加断熱方法で断熱が確実になります。
【土壁の付加断熱 充填断熱+外張り断熱工法の構造】

引用:yahoo知恵袋
調湿性・蓄熱性を活かし、土壁の外側に断熱材を入れています。
これにより外気を遮断します。
室内で暖房や冷房を切っても、熱や冷気が土壁の中に大容量で蓄えられ、室温の変化が少なくなります。
さらに断熱材と外壁の間に通気層を作ることで、夏は外から入ってきた熱気や土壁が吸った湿気を、冬は外の湿気を通気層から外に逃がし乾燥を防ぎます。
まさしく呼吸し蓄熱する土壁の長所を生かす断熱方法です。

気温と適度な湿度を安定して調節するから、冬はじんわりあったかくて夏はひんやり涼しい、懐かしのカフェになるのね♡
素敵だわ~。だって電気代も節約できそうじゃない?
仮に土壁を内側だけでなく、外壁も柱などが出ている真壁作りにしたい場合は、物理的に断熱リフォームは難しいと言われています。
リフォームを検討する場合は、経験豊富な業者にご相談することをおすすめします。
土壁の断熱リフォームまとめ
今回は、土壁の断熱リフォームについてご紹介しました。
①土壁には調湿性と蓄熱性があるが断熱性はない
②現代の気候と断熱性能基準を考えると土壁にも断熱は必要
③結露計算や土壁の断熱を理解し、技術のある業者が不可欠
④土壁は外張り断熱が最適。付加断熱だと確実
最近古民家の再生なども流行して、土壁の良さ・伝統の重み・先人の知恵などに触れる機会が多くなりました。
日本人でよかったなあと改めて思う僕です。今度、母さんを飛騨高山にでもつれていってあげようかな。
冬は厳しい寒さの飛騨だけど、今度は囲炉裏のある古民家で宿泊でも計画しようかなと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。