夏の日中、自宅の2階に上がることをためらいませんか?
むっとした熱気と少し動くだけで噴き出す汗、体験したことのある人なら想像して顔をしかめていることでしょう。
ほとんどの場合、一日中影になることもなく太陽を浴び続けているのですから、戸建住宅の上階の室内温度は外気や太陽光にかなりの影響を受けてしまいます。
このような外気や太陽光の影響を軽減するために有効なのが、屋根の断熱リフォームです。
では、屋根の断熱性能を上げるためにはどのようなリフォームを行えばよいのでしょうか。
リフォーム方法と価格についてもご紹介したいと思います。
■目次
屋根断熱と天井断熱、工法と価格は?

一言に屋根断熱といっても、屋根の熱や冷気を伝えないリフォームには大きく分けて屋根断熱と天井断熱の二つがあります。

引用:クオホーム
その名の通り、屋根に断熱リフォームを施すのか、天井に断熱リフォームを施すのかの違いです。
屋根か天井のどちらかを断熱すれば、室内の温度環境を快適にすることができます。
どちらかというと天井断熱で屋根の熱を室内に伝えないようにするのが一般的です。
しかし、小屋裏部分を収納やロフトとして有効活用している家は天井=屋根の裏側なので、屋根断熱しか選択できません。
ではそれぞれどのような工法があるのでしょうか。
価格も含めて紹介します。
屋根断熱の工法と価格
■屋根の葺き替え

引用:株式会社総合エイゼン
仕上げの屋根材によって断熱性能は異なり、金属製の屋根材は太陽光に熱せられて高温になりがちです。
このような熱伝導率の高い屋根材から、高断熱の屋根材に葺き替えることで、断熱性能を高めることができます。
では、断熱性能の高い屋根材はどんなものかというと、実はおなじみの日本瓦が最も断熱性能の高い屋根材なのです。



引用:全日本瓦工事業連盟
これらのグラフは屋根材別に、小屋裏や野地板の温度を測定したもので、どちらも瓦屋根が最も温度上昇を抑えられているのがわかります。


わずかな差だけどその通りだね。


しかし、瓦は他の屋根材に比べて重量があるため、どんな屋根へも葺き替えできるわけではありません。
耐震性や強度を確認した上でリフォームするようにしてください。
瓦屋根の葺き替え費用は一般的な住宅で160~200万円程度になります。
もし、耐震性や強度を増すための工事や、屋根の下地に傷みがあった場合はこの費用に修繕費が別途追加されます。
瓦屋根のリフォームについては、こちらをどうぞ!
■断熱、遮熱塗料を屋根材に塗布

引用:住宅総合研究所
瓦以外の屋根材では、定期的な塗装のメンテナンスが必要になります。
塗料の中には断熱効果や遮熱効果のあるものもあり、屋根材の塗装の際にこれらの塗料を選ぶことで屋根を断熱、遮熱リフォームすることができるのです。
では、断熱と遮熱の違いはどのようなものなのでしょうか。
断熱は内部と外部の熱移動を抑えることで、夏は熱せられた屋根の熱さが室内に影響しないようにし、冬は暖められた室内の熱を屋根を介して外に逃がさないようにします。
遮熱は太陽光を反射することで、屋根が太陽光に熱されることを防ぎ、屋根の表面温度を上げないことで室内に影響しないようにします。



断熱、遮熱効果のある塗料は一般的な塗料に比べて割高ですが、耐用年数が長いので、長い目で見れば屋根の塗り替えには必ず必要な足場の費用などを抑えられることになります。
ただ、塗装が必要な屋根材は、耐用年数はあまり長くないものが多いです。
屋根材がかなり傷んでいるのに塗装だけをすると、短期間でまた屋根材の葺き替えリフォームが必要になるため、時期を検討する必要があります。
屋根の断熱、遮熱塗料を塗布する費用は、足場費用なども含めて一般的な住宅で60~80万円程度になります。
■屋根の内側に断熱材を充填

引用:木の香の家
こちらは屋根の内側から断熱材を敷き詰めることで断熱する方法です。
勾配屋根に施工するには技術が必要になるので、熟練した腕のいい職人による施工が望ましいリフォームになります。
断熱材を敷き詰めるだけで断熱はできますが、実は断熱は断熱層の外部側の通気が肝心なのです。
どのように住宅を建築、リフォームしても外側からの雨水や内側からの水蒸気や結露などの水分が、少なからず構造部材に付着します。
それをいかにうまく逃がすかが住宅を長持ちさせるかに影響してきます。

引用:神清
屋根断熱を行う場合、小屋裏自体が存在しないことが多いので、上の図のように断熱層と屋根の下地材の間に通気層を設ける必要があります。
断熱熱材を屋根の内側に充填する方法は、一般的な住宅で20~50万円程度の費用になります。
遮熱、断熱塗料を屋根材に塗布 60~80万円
屋根の内側に断熱材を充填 20~50万円
天井断熱の工法と価格
■敷き込み工法

引用:長さんのリタイア生活
天井裏に断熱材を隙間なく敷き詰めることで断熱を行う工法です。
天井をはがさずに天井裏側から施工することも可能で、その場合工期も1日になるなど比較的取り入れやすい断熱リフォームです。
天井をはがさずに施工すれば費用は15~50万円程度。
もし天井をはがしての施工しかできない場合は、仕上げ費用や廃材処分費が加算されるため、費用は40~90万円程度になります。
■吹き込み工法

引用:ハウジングポート長岡
天井裏の形状が複雑で、断熱材を敷き詰めることが難しい場合は、綿状の断熱材を天井裏の部材に吹き付けることで断熱を行う工法です。
断熱材を吹き付けるので、隙間ができにくく断熱性は高いですが、敷き込み工法に比べると費用が高くなります。

屋根断熱と天井断熱、それぞれのメリット・デメリット

屋根断熱も天井断熱も断熱リフォームとしてはどちらも有効なものですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
それぞれの場合を見てみましょう。
屋根断熱のメリット・デメリット
まずは、屋根断熱のメリット・デメリットです。
・輻射熱が少なく暑さ対策に有効
・小屋裏空間が有効利用できる
・断熱材の厚みが限られる。
・天井断熱に比べて施工面積が広く、高コスト。
・断熱された空間が広く、天井断熱に比べて冷暖房効率が悪い。
天井断熱のメリット・デメリット
では、天井断熱のメリット・デメリットはなんでしょうか?
・施工が比較的簡単。
・屋根断熱に比べると施工面積が狭く、使用する断熱材も低コスト。
・断熱された空間が狭く、冷暖房が効率的。
・小屋裏空間が利用できない。
・小屋裏空間に熱がこもりやすく、輻射熱の心配がある。


室内空間と隣り合っている熱せられた空気量が、屋根断熱よりも天井断熱の方が大きいから、室内温度に影響しやすいということなんだ。

屋根裏断熱については、こちらで詳しく解説しています。
屋根断熱と天井断熱を併用すると危険!?

屋根断熱リフォームと天井断熱リフォームの両方を実施すると聞くと、断熱箇所が二重になってより効果があるように感じませんか?
でも、これらを併用するのはあまり好ましくはありません。
屋根と天井の両方を断熱仕様にすると、屋根裏部分の空間が密閉されて空気の出入りがなくなってしまいます。
すると、結露が発生して家の構造部材を腐食したり、夏場は熱気がこもったままになってしまい逆に室内温度へ影響を及ぼすことになります。




屋根裏の空間を密閉することもないから、併用することができるよ。
屋根の断熱リフォームのまとめ
屋根断熱と一言で言っても、工法は様々あることをご紹介してきました。
個々の住宅の特性によって工法を選択する必要がありますが、メリットとデメリットを考えてみると一般的に天井断熱が選択される理由がよくわかります。
断熱という気密化を図るリフォームに断熱層の外側に通気が重要であることも、断熱リフォームを検討する際にぜひ心に留めておいてくださいね。




2階にリビングルームがある家も増え、屋根の断熱リフォームは2階を活用するためにもより必要とされるリフォームになっています。
夏の暑さと冬の寒さに自宅スペースを限られることなく、快適に過ごせる家にできるといいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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